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顕微鏡の用語集

用語 意味
DIN規格
DINきかく
Deutsche Industrie-Norm

DIN 規格とは、Deutsche Industrie-Norm の略でドイツ工業規格のことです。日本のJIS 規格(Japanese Industrial Standard)のようなものです。顕微鏡の設計や製造の単純化・合理化のために顕微鏡の規格の標準化が進められてきた結果、世界中の顕微鏡の殆どが DIN 規格を採用しています。

レイマーの顕微鏡もDIN 規格の製品で、欧米諸国で広く使われている顕微鏡と同等です。世界規模での顕微鏡市場では、DIN 規格の製品が圧倒的多数を占めているため、DIN 規格は顕微鏡の国際標準規格のように扱われています。

対して、JIS 規格の製品は主に日本国内に限定して採用されており、世界的な市場では少数です。それ故、顕微鏡の部品やアクセサリーの選択の幅は世界的な視点で見れば DIN 規格製品の方が圧倒的に勝っています。

将来的に部品の交換が必要になったときのことを考えると、世界的な市場で圧倒的に流通している DIN 規格の顕微鏡を購入するのが賢明かもしれません。
とはいえDIN 規格と JIS 規格は似通った部分も多くあります。接眼レンズをはめ込む部分(鏡筒内径)は23.2mm, 対物レンズのねじ込み規格はM20.32 xP0.706 (36TPI)でDIN、JISで共通しています。

他にも機械的鏡筒長は160mmで共通です。カメラアダプター等への機械的な接続条件は同じであるといえます。(但し鏡筒の外径は両規格共に規定がないそうで、製品によって若干の相違があるようです) 現在規格化の流れはISOへと向かっているそうです。
アクロマート対物レンズ
あくろまーとたいぶつれんず
achromatic objective

赤(C線)と青(F線)の2色について色収差を補正した対物レンズでもっとも一般的な対物レンズ。色収差の他にコマ収差や非点収差も補正されている。

赤・青に加え黄(d線)なども補正したものをアポクロマート対物レンズ(apochromatic objective)と呼ぶ。セミアポクロマート対物レンズ(semiapochromatic objective)はアクロマートとアポクロマートの中間的性質を持ち、フルオリート、フルオライト(fluorite)とも呼ばれる。
開口数
かいこうすう
numerical aperture

対物レンズやコンデンサの性能を決める上で重要な値です。開口数が大きいほど、明るく、分解能が優れています。

開口数N.A.は以下の式で求められます。

N.A.=n×sinθ

n:試料と対物レンズの間に介在する媒質の屈折率(空気の場合は1,イマージョンオイルの場合は1.515)

θ:開口角。光軸上の一点から出て対物レンズに入る光のうち、対物レンズの最も外に入る光が、光軸となす角度
球面収差
きゅうめんしゅうさ
spherical aberration

レンズに一点からでた単色光を入射させたときには、レンズの光軸に近い部分を通過した光と、光軸から遠い部分を通過した光はひとつの点には集まらず、ある範囲内にひろがってしまいます。この現象を球面収差といいます。

凸レンズと凹レンズでは球面収差が逆に出るため、球面収差を補正するために凸レンズと凹レンズを組み合わせて使用したりします。

球面収差
鏡基
きょうき
顕微鏡の器械的装置全体を指す言葉。鏡脚、鏡柱、ステージ、鏡筒、レボルバ、粗微動焦準装置、コンデンサ上下調整装置など種々の顕微鏡の器械的構造物の集合体を指す。架台ともいう。
同義:架台
鏡脚
きょうきゃく
base
顕微鏡を支えている台の部分。ベース、鏡台ともいう。
同義:ベース、鏡台
鏡柱
きょうちゅう
arm

顕微鏡の光学系部分を支持する本体部分を指す。鏡脚に固定されているものや、関節を介して鏡脚に固定されているものがある。

小型顕微鏡ではC字型の形状、大型の顕微鏡ではF字型をしているものが多い。F字型のものは鏡柱上部で鏡筒を支持し、下部は焦準装置を支持するものが多い。
鏡筒
きょうとう
tube

一端に接眼レンズ、他端に対物レンズを取り付けることのできる部分。単純な形状のものでは単なる筒状である。複雑な形状のものでは、内部にプリズムなどを有し、鏡柱の上部に取り付けられて水平面で回転できる構造になっているものなどがある。

鏡筒に取り付け可能な接眼レンズ数により、単眼鏡筒(接眼レンズ1個)、双眼鏡筒(接眼レンズ2個)、三眼鏡筒(双眼鏡筒に写真撮影などに使用する鏡筒が加わったもの)などの種類がある。

鏡筒の名称3種類
A:単眼鏡筒、B:双眼鏡筒、C:三眼鏡筒
関連:単眼鏡筒、双眼鏡筒、三眼鏡筒
コマ収差
こましゅうさ
comatic aberration

レンズに斜めから光を入射させたとき、レンズの光軸に近い部分を通過した光と、光軸から遠い部分を通過した光は焦点の位置がずれてしまいます。この現象をコマ収差といいます。コマ収差により、顕微鏡像に彗星のしっぽのようなものが発生します。

コマ収差
コンデンサ
こんでんさ
condenser

光源からの光を集めて、標本を照らす光を増強したり、コンデンサ絞りやコンデンサの上下位置の変化によって照明光を変化させるための装置です。

アッベ・コンデンサ、アプラナート・コンデンサ、暗視野コンデンサ、位相差ターレットコンデンサなど、様々な種類があります。コンデンサの開口数(numerical aperture; N.A.)は1.25などの数字で表されます。

使用する対物レンズの開口数よりも大きな開口数を持つコンデンサを使用すると、対物レンズ毎にコンデンサの虹彩絞りを調整して、対物レンズの開口数とコンデンサの開口数を合わせることができます。

対物レンズの開口数とコンデンサの開口数が一致したときが最も解像度がよいとされていますが、実際にはコンデンサの開口数を対物レンズの開口数の70~80%ぐらいにするほうがよりコントラストのよい顕微鏡像になり、観察には適しているといわれています。
集光器ともいう。
同義:集光器
ジーデントップ
じーでんとっぷ
Seidentopf

双眼部の形態の一種。双眼部にはジーデントップ型とイエンチェ(Jensch)型がある。瞳孔間距離を合わせるために、ジーデントップ型は鏡筒を上下に動かすのに対し、イエンチェ型は左右に動かす(イエンチェはスライディングとも呼ばれる)。

ジーデントップ型は瞳孔間距離を変えても機械的鏡筒距離が変わらないという利点を有する。視度補正環はイエンチェ型は機械的鏡筒距離が変わるために、これを補正するための補正環が左右両方の双眼部に付属されている。

顕微鏡の双頭部の形態2種類
A:ジーデントップ型、B:イエンチェ型
関連:イエンチェ(Jensch)
実視野
じつしや

顕微鏡を覗いたときに見える円形の視野のこと。実視野は広いほど、広い範囲を一度に観察できます。実視野は以下の式で求められる。

実視野=接眼レンズの視野数÷対物レンズの倍率

たとえば視野数18mmの接眼レンズと、4 倍の対物レンズを用いたときには、実視野は4.5mmとなり、標本の中の直径4.5mmの円内を一度に観察できるということです。
視野数
しやすう
接眼レンズで見ることができる中間像の直径のこと。通常mmで表される。中間像とは対物レンズによって作られる像で、接眼レンズ内にある視野絞りという円形の金属の輪の部分にできます。この視野絞りにあいている輪の直径を視野数と呼びます。
焦準装置
しょうじゅんそうち
forcussing

標本にピントを合わせるための装置。生物顕微鏡では粗動焦点ハンドルと微動焦点ハンドルのふたつを有するものが多い。焦点を調整するために、鏡筒を上下に可動させるタイプと、ステージを上下に可動させるタイプの顕微鏡がある。

焦準装置
鏡筒上下型(A)とステージ上下型(B)の焦準装置
焦点深度
しょうてんしんど
focal depth

観察対象の試料内のある部分に焦点を合わせたときに、同時に明瞭に見ることができる上下方向(光軸方向)の距離のことです。焦点深度が深い(値が大きい)ほど、試料内のあつい範囲を同時に見ることができます。

顕微鏡観察における焦点深度には客観的焦点深度と主観的焦点深度があります。客観的焦点深度はレンズのみの焦点深度を指し、主観的焦点深度は観察者の目による補正の深度です。目による観察の場合は、客観的焦点深度と主観的焦点深度の合計が焦点深度となります。カメラなどでの顕微鏡写真撮影の場合は、客観的焦点深度のみとなるので焦点深度が目の観察の場合に比べて浅くなり、焦点を合わせるのが難しくなります。

開口数の大きいレンズほど、また総合倍率が大きくなるほど焦点深度が浅くなります。コンデンサー絞りを絞ると焦点深度を深くすることができますが、分解能は低下してしまいます。

低倍率での顕微鏡写真撮影は、焦点深度のうち客観的焦点深度よりも主観的焦点深度が占める割合が大きいので、目による焦点調整が難しくなります。
ステージ
すてーじ
stage

顕微鏡標本を保持・固定する台の部分。
プレーンステージ、メカニカルステージ、回転ステージなどがある。

プレーンステージは標本を固定するための単純な板バネ状のクリップ(クレンメル)が付いている。メカニカルステージは標本を保持したまま水平面において前後左右に可動するので、検鏡時に便利である。回転ステージは主に偏光顕微鏡に用いられる。
載物台ともいう。

顕微鏡の主なステージの種類
A:プレーンステージ、B:メカニカルステージ、C:回転ステージ
同義:載物台  関連:プレーンステージ、メカニカルステージ、回転ステージ
接眼ミクロメーター
せつがんみくろめーたー
接眼レンズ内に組み込んで使用するスケールのことです。一般的には10mmを100等分したスケールが用いられます(スケールの最小目盛りは0.1mm、すなわち100μmです)が、他にも十字にスケールが描かれているものや、方眼のもの、分度器のものなど多くの種類があります。対物ミクロメーターと組み合わせて使用します。
関連:対物ミクロメーター
総合倍率
そうごうばいりつ
total magnification

総合倍率Mは以下の式で求められます。
M=接眼レンズの倍率×対物レンズの倍率

たとえば、10倍の接眼レンズと40倍の対物レンズを使用した場合、総合倍率は400倍となります。

付属品を使用する場合に、その倍率をかけることがあります。
M=接眼レンズの倍率×対物レンズの倍率×付属品の倍率

写真撮影などを行う場合は、撮影装置の倍率をかけます。写真撮影の倍率は、写真倍率とも呼ばれます。
M=対物レンズの倍率×撮影装置の倍率

※接眼レンズを使用する場合は以下の式になります。
M=対物レンズの倍率×撮影装置の倍率×接眼レンズの倍率

CCDカメラを使用したときのモニタ上での倍率は以下の式で求めます。
総合倍率=対物レンズの倍率×CCDアダプタの倍率×(モニタサイズ÷CCDサイズ)

たとえば、40倍の対物レンズと、0.5倍のCCDアダプタと、1/2インチのCCDカメラと、21インチのテレビモニタを使用した場合は、

モニタ上の倍率=40×0.5×(533.4÷8)=1333.5倍

となります。ここで注意ですがモニタのサイズをmm換算してください。21×25.4=533.4(1インチは25.4mm)

また、CCDサイズは以下の表より求めて下さい(1/2 インチCCDの対角線の大きさは8mm)

センササイズ 幅 [mm] 高さ [mm] 対角線 [mm]
1インチ 12.7 9.5 15.9
2/3インチ 8.8 6.6 11
1/2インチ 6.4 4.8 8
1/3インチ 4.8 3.6 6

尚、倍率が大きければよいということはありません。解像力(分解能)が重要になります。
対物ミクロメーター
たいぶつみくろめーたー
スケール書き込んだスライドガラスのことです。一般的には、1mmを100等分したスケールが用いられます(スケールの最小目盛りは0.01mm、すなわち10μmです)。接眼ミクロメーターと組み合わせて使用します。
関連:接眼ミクロメーター
プラン対物レンズ
ぷらんたいぶつれんず
plan objective

もっとも一般的な対物レンズでは、実視野全体のうち視野の中央部の65%ぐらいの範囲において焦点が合うように作られています。

焦点が合っている範囲を平坦性のある部分と呼んだりします。

プラン対物レンズは 湾曲収差を補正した対物レンズのことで、像面の有効平坦度は実視野全体の95%ぐらいです。つまり、一般的な対物レンズでは、視野の中心部で焦点を合わしても視野の辺縁部に行くに従い焦点が合わなくなるのですが、プラン対物レンズでは視野の中央で焦点を合わせれば視野の辺縁部近くのものにも焦点が合います。

一般的な対物レンズとプラン対物レンズの中間的な性能を持つものをセミプラン対物レンズと呼び、像面の有効平坦度は実視野全体の80%ぐらいです。

プラン対物レンズ
黄色部分が平坦性のある部分。
A:一般的な対物レンズ、B:セミプラン対物レンズ、C:プラン対物レンズ
分解能
ぶんかいのう
resolving power

微小に離れた2点を、2つであると見分けることができる最小の間隔のことをいいます。

分解能は以下の式で求められます。
分解能=λ/NA
λ:使用する光の波長
NA:対物レンズの開口数

この数値が小さければ小さいほど、顕微鏡としての性能が高いといえます。

分解能は光の波長と対物レンズの開口数にのみ決定されることより分かるように、倍率とは無関係です。より大きな開口数を持つ対物レンズと、より波長の短い光を用いて観察するほど解像力の優れた観察ができることになります。
レボルバ
れぼるば
revolving nose-piece

倍率の異なる対物レンズを容易に交換可能にするための回転装置。
鏡筒下部や、鏡柱の上部で鏡筒につながる位置に取り付けられている。

使用する対物レンズを光軸に一致した位置で容易に固定することができる。使用していない対物レンズが観察者側を向くレボルバと、逆方向を向く“逆レボルバ”がある。回転器ともいう。

顕微鏡のレボルバ
A:通常のレボルバと、B:逆レボルバ
同義:回転器  関連:逆レボルバ
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